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[2018年3月13日]
生ハムの秘密に迫る、スペインの旅③
トレベレス村の朝7時はまだ真っ暗です。でも昨日の夜と違うのは空気です。天空の町というのは本当で、まるで雲と宇宙の間にあるものすごく透き通った空気を吸っているような、あぁここは標高が高いんだなぁと思い出させるような空気でした。
まだ住宅街も静けさを保つ早朝、トレベレス協会のお姉さんの車で工場へ向かいました。既に灯りがついたアントニオ・アルバレス社の工場へ到着すると、フランシスコ社長が元気に迎えてくれました。「随分早いですね!」と言うと、「私はここの上階に住んでいるから誰よりも早く出勤しているんだよ!」と笑顔で答えてくれました。フランシスコ社長は奥さんと娘2人息子1人の家族持ちですが、現在はグラナダで生活しているらしく、一人ハム工場の真上で単身赴任しているのです。元々は建築家でしたが、20代で会社を継ぎ、それ以来会社を10倍以上大きくした、とても情熱的で笑顔の素敵な人でした。
さて早速我々も衛生服に着替え、ハムの製造工程を見せてもらいました!
まず中へ入ると、荘厳たる大理石の壁、そしてピカピカに磨かれた床に衛生面の高さが覗えました。
まず初めのエリアはハムの原料となる豚肉が入荷する場所。入荷した豚肉はまずここで重量を測定後、1本ごとにバーコードが付けられます。このバーコードによって綿密なトレーサビリティ管理を行い、高品質に繋がっているのです。(詳しくは後程!)
入荷した原料肉は塩漬け庫に運ばれます。この日はたまたま入荷したばかりのハムを実際に塩に漬けている様子を見ることができましたが、一瞬一人の男性が雪かきをしているように見えました!(笑)なぜなら、広い部屋一面に塩が広がってとても幻想的なのです。しかし、この持ち場はきついだろうなと思いました。なぜなら元の原料豚の重さは12kg以上あり、その肉塊を丁寧に列に並べてシャベルで塩をかけて、という作業を何百本とこなすのですから・・・でも恰幅の良いお兄さんは軽々と持ち上げテンポ良く作業していてかっこよかったです!
ところでアントニオ・アルバレス社のすごいところは、原材料に強いこだわりがあるという点。安価なハモンセラーノは添加物・着色料を使っているメーカーがほとんどですが、ここでは豚の骨付きモモ肉と地中海の天然塩だけを原材料としているのです。
まずは原料となる豚のモモ肉。トレベレス村は標高1750メートルという非常に高い場所にあるため、豚の飼育は行われておりません。そこでカタルーニャ州やムルシア州まで行って厳選してきています。
次に塩。塩はバレンシア州アリカンテ県トレヴィエハ湖の天然塩を使っています。トレヴィエハはピンク色の塩湖として有名で、この海塩がハム作りに非常に適しているのだそうです。アントニオ・アルバレス社では純度100%の中でも更に純度の良いものを厳選しています。
美味しくて安全なハムを作るために、材料からひとつひとつ選び抜き妥協しない姿勢に、200年以上愛され続ける理由が分かったような、ものづくりへの誇りのようなものを感じました。
ちなみに、上の写真のように豚の足全体を塩漬けしないのは、足の付け根部分は熟成期間中に塩が下に回るため。また、重量が軽いものから塩が回るので、同じ日に塩漬けを開始したものでも重量が軽いものから取り出してゆきます。
こうして塩漬けされた豚足が次に向かう先は、塩抜きマシン!このマシンの中に塩から取り出した豚足を1本ずつ入れると、シェラネバダ山脈の湧き水(飲料水)で洗い流しながらローラーでプレスされることによって、余分な塩分と血が排出されます。マシンの出口では職人さんが最終的にプレスをしていました。この作業はハムの味わいを均等化するために行われています。
仕上げに機械でハムの形を整えたら、職人さんから綺麗な紐を結んでもらいます。