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[2018年6月7日]
生ハムの美味しさの秘密に迫る、スペインの旅④
塩漬けにされた豚肉たちが次に向かう先は冷蔵庫。以前は暑い季節に仕込みを行いませんでしたが、近年では法律が変わり、塩抜き後3ヶ月間は冷蔵庫による熟成が規定により義務付けられているため、夏も仕込みをしています。
はじめの40日間は1~3℃、湿度75%で保管し、その後は1週間ごとに温度を1℃ずつ上げ、徐々に常温に慣らせていきます。逆に湿度は徐々に下げていきます。
冷蔵庫内は広く、沢山のハムがぶら下がっていますが、ムラなく冷蔵するために風を循環させ、コントロールパネルによって温度と湿度を自動管理しています。
こうして徹底的に冷蔵された生ハム予備軍は熟成庫に運ばれ、いよいよ熟成がスタートします。一般的な安価なハモンセラーノは工場内で自動管理された大量生産されていますが、ハモン・デ・トレベレスは違います。ここにはエアコンなどなく、あるのは目の前に広がるシェラネバダ山脈と窓のみ。そう、2500メートルのシェラネバダ山脈からの風と空気を、窓や雨戸の開け閉めによって庫内へ取り込んでいるわけです。このタイミングは長年の経験から培われた職人技の見せ所!窓の開閉はマエストロの自宅の電話を使って操作ができるようになっているので、夜中でも雨や風の状態を見て、その度に開けたり閉めたり調節しています。
ただしこのような熟成方法は天空の町トレベレス村の類稀な気候でしかできないことであり、まさしく「ハモン・デ・トレベレス」と呼ばれるに至った由縁なのです。
さて、熟成4~5ヶ月目はハムにカビが最も出やすい時期です。カビが生えたら一度洗浄機で洗い、よく乾かした後「マンテカ」と呼ばれる豚由来のラードを表面に塗って、カビや乾燥から守ります。22ヶ月のハムの一生の中で4回もマンテカを塗られるのです。
フランシスコ社長によれば、「昔はハムをカビがびっしりと覆ったブラック!な方が格好良いと言う風潮もあって、カビを生やしたまま出荷していたけれど、女性の顔もお化粧すると綺麗になるのと同じで、ハムもカビを取ってマンテカでお化粧した方が綺麗でしょ?ましてや食品は綺麗な方がいいからね」
これについては、メーカーの考え方によって違いはあるそうです。ちなみにハモン・イベリコはマンテカを塗ると熟成が止まってしまうそうです。それについてはまた次回書かせて頂きます!
こうしてお化粧をされたハムは1日に3,4粒の汗をかきながら、ゆっくりと成熟してゆきます。そしてその過程で脂が赤身に浸透し、ハモン・デ・トレベレス特有の旨味、甘みが生まれるのです。
長い熟成期間を終えたハムは、最後に品質管理委員会の厳しいチェックにパスしたものだけが、ハモン・デ・トレベレスと呼ばれ、Tマークのロゴを付けることを許されます。
以上でトレベレス工場見学レポートは終わりですが、ご意見・質問などあればお問い合わせください。